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アンバランス

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    「好きだからって、どうしようもないことですわ。」



    デュカはひとりごち、なかったことにしようと封じ込めた。
    彼女が気づかぬうちに恋情は一人前に膨れ上がっていた。
    最初に彼が恋人といるところを見たのは、知り合ってから何度目かの星降りの夜だった。
    髪の長い、柔らい印象のかわいい子。彼の好きな青色の髪に花が咲いたような笑顔。
    同い年だというのに、自分にはない華やかさを持っている少女。
    こんなに惨めな気持ちになったのは初めてだった。

    若くして大神官という職についている手前もある。
    でもそれ以上に、彼女にとって恋愛は扱いかねる代物であって、年相応に身を投じることはどうしてもできなかった。
    ましてや、手が届かなくなって初めて気づくなんて。

    だから、無視することに決めた。


    「それで、私と晩ご飯食べてて彼女は何も言わないんですの?」
    「あ、いや…先週ふられた…」
    「……ご愁傷様。」

    いい気味ですわ、といいながら心が弾んでいる自分を少し戒める。

    彼とはずっとこうして、ときどき食事に行く。
    忘れようと思う相手が目の前にいる。
    この3年間、デュカは相変わらず自分の感情をコントロールできないでいた。

    「いい気味ってなんだよ!!少しぐらい優しく接しろよ!!」
    「それだけ元気でしたら必要ありませんわ。だいたい自業自得じゃありませんこと?」
    「えー!彼女とも友達とも遊んで何が悪いってんだよ。」

    デュカにとって、自分のことも大事にしてくれることは嬉しかった。
    同時に、友達と言い切られたことに少し心が痛む。

    「…今までの子と全部それで別れてるでしょう?」
    「…そーだけどよー…」
    「でしたら私に構ってる場合じゃないと思いますけど。」
    「お前は俺と飯食うの嫌なのかよ?」
    「そうじゃなくて、普段の行いが悪いからそんなことで別れちゃうんじゃありません?」

    「…」
    「私の方はたまーに、ぐらいでいいんですのよ?大体軽いんですわ!いろんな女の子と仲良くして…」
    「どういう意味だよ」
    「えっ…」

    言い過ぎた。
    浮かれて言葉が転がるままに、知ったようなことを。
    はっと眼を上げると、アレクの蒼眼が静かにこちらを睨んでいる。

    「俺は、今まで3人しか付き合ったことない。一人は多分向こうがそう思ってなくて、まともな付き合いじゃなかったけどよ。俺は大事にしてるつもりだった。どれも好きだったからだよ。」
    「あ…あの」
    「女友達のことはちゃんと彼女に話してあるし、誰かに気を持たせたつもりもない。
    それで駄目んなったなら俺にすげえ責任はある。でもだからってお前にそんなこと言われる筋合いねぇよ。……俺帰る。」

    無造作に紙幣を何枚か置き、振り返りもせずに出て行った。
    後に残されたデュカは、喪失感の中呆然と扉を見つめていた。
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