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星と太陽

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    明日から毎年恒例の星祭が始まるわ。
    神官所は1年で一番慌しく動いている。私も今日はいっぱいいっぱいよ。
    お振る舞いの用意や当日の手順の確認、それから初めて星祭を執り行う下の子たちへの説明。
    一息ついて、私は中庭のベンチで少し休んでいた。
    ちょうど大きな足音が聞こえたのはそのときだったわ。

    「おわっ、アナマリアさん!ちーッス!」
    「あらアレックスさん。今日はビショップここにはいませんよ。」

    元気な声も一緒にね。
    彼はよく神官所に遊びにくるわ。
    お母さんがここで働いているのもあるけれど、ビショップ−私の直属の上司−の友達っていうのが大きいわね。
    ビショップは文字通りここの最高神官なのだけれど、まだ15歳の少女。いつも堅くて、完璧で、年不相応の落ち着きを持っているのだけれど…

    「あーうん、そうだろうなって思った。あいつむっちゃくちゃ忙しーもんな。まっ、今日はおかんのとこに来ただけだからいいよ。」
    「あら、どうしたんですか?」
    「小遣いもらいにさ!明日から星祭だもんな!あ、そーだアナマリアさんもお勤め頑張ってなッ!!」

    ここに来たときよりも大分背が伸びたけど、いたずらっぽい笑顔はまだまだ幼さを残している。
    誰にでもタメ口で話しかけて言いたいことをすぐ叫び散らす。失礼だ、って言う人もいるけれど、私はそこがからっと明るくて好きだわ。大体そういう人も決して彼を憎みきれていないもの。
    本当、元気で太陽のような男の子。
    私は知っている。
    彼の作り出す暖かい光でビショップの大人の仮面がほろり、と融けてなくなる瞬間を。
    願わくば、このまま一緒に成長していってほしい…だなんて、私ビショップだけじゃなくてこの子までわが子のように思っているのね。

    思わず自分の顔がほころび、肩がほぐれるのを感じながら彼に感謝を述べたわ。
    「いーってことよ!応援してるからな。 あ、そうだ。アナマリアさんには景気付けに教えてやろっかなあー」
    「あら、何かしら?」
    「んーんへへっ。えーとなっ。   俺今日彼女できたんだ!」

    私の顔が笑みを崩さなかったのが、幸いだったと思う。

    「……あ、そうなんですか!それは… よかったですね」
    「あー。今の間しつれーだぜ。俺にだって彼女ぐらいできるってばぁ!」

    私の戸惑いの原因は、浮かれた彼にはわからなかったのね。よかった。
    ため息をつきながら彼を見送ったわ。
    ほっとしたような、どうなってしまうのか不安なような…

    度のすぎたことではあるのだけれど。私が思うのもおこがましく、不毛なのだけれど。
    でもビショップ。
    あなたは傷つかずにいられますか…?



    星祭の日、神官たちは言葉を封じて星たちを見守る。
    私たちが、彼と彼より頭一つ分小さな女の子を見たのは最初の星が昇る瞬間だった。
    ビショップが一瞬だけ立ち止まったのが私にはわかったわ。
    軽く開いた口からは声が出ることはなかったけれど、私には聞こえていたわ。
    か細い悲鳴が彼女を少し、引き裂く音が。
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