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がくせん!

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    「……全部、知ってたんですか。」


    カンナは肩を震わせ、泣きそうな顔で涼平を見つめた。


    「……波野さんのことも。瑠璃君のことも。」
    「うん。」

    「知ってて、あれだけ追い詰めて…」


    波野泡沫は黒軍を裏切って神名星姫に殺され。
    禄風瑠璃は赤軍との間で揺れ動いた結果、黒への情報リークがばれて赤の刺客に始末された。
    そして今。

    涼平の足元にはエレキテルが倒れ伏している。
    外傷は見当たらないが、もう呼吸している様子は見えない。

    「大公寺君が今言ってたことは本当なんですね……
    次は青鳥先輩を……殺す気ですか」

    相手の弱みを洗い出し、心を許しそうな人材を近づけ、外堀を埋める。
    黒軍に忠誠を誓うなら儲けもの、葛藤に負け追い詰められて自滅するならそれでよし。
    裏切り者はゆっくりと孤立させ、機を見て静かに始末する。
    それが、カンナが尊敬していた先輩の素顔だった。


    「氷上先輩、俺は… 氷上先輩は黒軍のみんなのことを思って頑張ってるって、ずっと…」
    「思ってるよ。」
    「僕のことも利用したんですか…!」
    「人聞き悪いなカンナ君… 思ってるからこそ、カンナ君に頑張ってもらったんじゃない。」
    「こんなこと、こんなことのために僕は…僕は大事な人たちを…」
    「カンナ君おさえておさえて〜。お前は黒軍の希望だから、失いたくないんだよ」

    短い眉を顰めてに溜息をつく涼平が、死の充満したこの場に酷く不似合いに見えた。
    この人をこのままにしておいてはいけない。

    「ヴァアアアアアアアッ!!」
    せめて、僕の手で黒軍の侵食を止めなければ。
    先輩に励まされて、やっと戦場での進路を切り開けるようになった僕が。
    先輩と一緒に選びにいった愛用の刀。
    先輩に教えてもらった。相手に斬りかかる瞬間、自分の速度も抜刀速度もトップスピードに乗れるように。

    渾身の一太刀を浴びせようと、涼平に向かって駆けていく。



    次の瞬間、体が空気をはらんで浮いた。
    前のめりに地面に撃ちつけられる。

    涼平が刀を蹴り飛ばし、後ろ手にカンナを締めあげた。

    「強くなったね。でも、お前の動きは誰より知ってるよ。」

    露わにされた首に何かが引っかかった。
    ごめんね、と耳元でつぶやく声。

    「さっきあいつに使っちゃったから、楽な殺し方してあげられなくて。」

    喉仏に強い圧力がかかり、視界が薄れる中、カンナは聞いた。
    涼平のいつも通りの声を。

    「一緒に戦えて、ほんとに… 嬉しかった。ありがとう。」
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